何事もうつりのみゆく世の中に
良寛さんは江戸時代後期の曹洞宗の僧侶です。
ゆったりした中に深いやさしさを感じられる味わい深い俳句や和歌をたくさん残しておられます。
今回取り上げた「何事もうつりのみゆく世の中に 花は昔の春にかはらず」という和歌もそんななかのひとつです。
当寺では境内で保育園を経営しており、毎年三月末の卒園式で何名かの園児が卒園していきます。
少し前に保育園に入ってきた赤ちゃんがいつのまにか大きくなり、みんなで練習した卒園の歌を歌ってポロリと涙を流して卒園していく。
そして卒園式のあと、咲き始めた境内の薄紅色の桜の花の下で、昔と違ってカラフルになったランドセルをそれぞれ背負ってみんなで記念写真を撮影。
毎年の光景です。
子どもの顔ぶれは毎年変わってゆきますが、同じ桜の木の下で同じ光景が毎年繰り返されます。
人の世は流れていきます。
無常観を書いたことで有名な鴨長明の方丈記の冒頭は「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」で始まりますが、まことに全てのものは変化し続けずっと同じ状態であるものはありません。
同じように咲くように見える桜も少しずつ年を取りいつかは枯れてゆく。そして代わりの桜が植えられまた毎年花を咲かせてゆく。
変わっていってしまう中にあって毎年同じように咲く桜の花に心を寄せ、純粋に美しいという思いがこの良寛さんの歌からは感じられます。
諸行無常の流れの中で毎年同じように花を咲かせ続ける自然の生命の力に、大きな包み込まれるような暖かさを感じながら作られた歌であるように思います。
変わり続けるこの世界の中で、変わり続けながらも同じ姿を保ち続けようとするのが生命。
私たちも生命の一つです。
せっかく生まれてきた生命ですから死ぬまで元気いっぱいに美しく生きたいものだなと思います。
それが生命の自然な姿なのだろうと思います。
良寛さんは五合庵という小さな庵に住んでいましたが、近くに住んでいる子供たちと遊ぶのが大好きでした。
きっと良寛さんも一緒に遊んでいる子ども達に向けて、現実は厳しいけれど元気いっぱいに成長していけよと祈りのような気持ちを持っていたのではないかとなんとなく思います。
住職記
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