恩は着るもの着せぬもの

 「恩は着るもの着せぬもの」この言葉は雑誌を見ていてふと目にした言葉なのですが、短くてとても良い言葉だと思いましたので取り上げさせて頂きました。
他人から受けた恩は忘れないようにして、他人に施した恩は忘れなさいということ。
仏教的には前半の「恩は着るもの」は、おかげさまやありがとうという感謝の気持ちをいつも大切にするということであり、後半の「(恩は)着せぬもの」とは他人のためになることを何かするのであれば、それは布施の心を持ってなすべきであり見返りを求めるべきではない、というふうに捉えることが出来ると思います。

●恩は着るもの
人は誰かに自分が必要としている物をもらったり何かをしてもらった時、自然に”有難い”という感情を持つと思います。
ありがとうという言葉と心は、常に周りの世界に対して自分が発信する原始的といっても良い根源的な感情ではないでしょうか。
ありがとうというのは人の心の自然な発露です。
ありがとうといつも言っていると自然に人は穏やかになり幸せを感じられるようになります。
皆が皆に対して自然にありがとうという心でありがとうと言える世の中が幸せな世の中と言えるのではと思います。
そして、人にしてもらったことを忘れずにいるということは人としてとても大切なことだと思います。

●(恩は)着せぬもの
私心を挟まず、見返りを求めずに人のために何かをしてあげることを仏教では布施と言います。
布施という言葉は、現在では僧侶への謝礼を意味することが多いですが、本来は広く施すという意味で、仏教では大切な修行徳目です。
布施をするに当たって大切なことは見返りを求めないこと。
そこに少しでも見返りを求める心(自分の利益を考える心)があるとその分だけ心の濁りが生まれてしまいます。
見返りを求めずにただ必要な物を必要なところへ私心を挟まずに回し向けてあげる、それが布施。
布施をすると心の中が綺麗になります。

●まとめ
他人に何かしてもらってもなかなか有難うが言えないことがあります。
また、欲望を持った身である我々には全く私心無く行動するというのは難しいことです。
しかしながら、人生は短くつべこべ考えているうちに終わりが来てしまうかも知れません。
もっとシンプルにありがとうという言葉を素直に周囲に伝えて、人の喜ぶことを素直にしてあげて、自他共に穏やかで幸せな心になって行けたらと思います。
住職記

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